2012年8月6日月曜日

敗血症性ショックにおいてクーリングは有用

Schortgen F, Clabault K, Katsahian S, Devaquet J, Mercat A, Deye N, Dellamonica J, Bouadma L, Cook F, Beji O, Brun-Buisson C, Lemaire F, Brochard L.
Fever control using external cooling in septic shock: a randomized controlled
trial. Am J Respir Crit Care Med. 2012 May 15;185(10):1088-95. Epub 2012 Feb 23. PMID: 22366046

結論
敗血症性ショックにおいてクーリングは昇圧剤の量を減らし, 早期の死亡率を改善する

疑問
敗血症性ショックの患者において, クーリングは昇圧剤の量を減らしたり, ショックを改善したり, 死亡率を減少させるか?

方法
フランス, スイスの7つのICUs.
RCT. Allocation後のblindingは不能. 昇圧剤はアルゴリズムに従い減量. 看護師が行う.

患者
昇圧剤, 気管挿管, 人工呼吸管理, 鎮静剤が必要な感染症がある中心体温が38.3℃以上の成人(200人)

Intervention
中心体温を48時間36.5-37℃に保つ(101人)

Control
クーリングなし(99人)

Outcomes
Primary: 48時間後の昇圧剤の量が50%減少する患者数
Secondary: 2,12, 24, 36時間後の昇圧剤の半減する患者数, 48時間での昇圧剤を増量した患者数, ICUでショック回復の患者の割合, SOFA scoreの変化, Day14, ICU, 退院時の死亡率

結果
クーリングにより昇圧剤が50%減量できた患者の割合は12時間で有意差があったが48時間ではなかった。
ICUでのショック回復は有意にクーリング群で多かった.
Day 14での死亡率はクーリング群で低かった.

50%昇圧剤減量の患者数(cooling n=101 vs no cooling n=99)
2hrs後: 11 vs 4: AOR 3.74(1.01-13.84)
12hrs後: 55 vs 20: AOR 5.07(2.53-10.15)
24hrs後: 66 vs 37: AOR 3.28(1.72-6.28)
36hrs後: 71 vs 55: AOR 1.95(1.05-3.65)
48hrs後: 73 vs 61: AOR 1.65(0.88-3.13)

昇圧剤増量を必要とした患者: 35 vs 52: AOR 0.49(0.27-0.90)

ICUでのショック回復: 87 vs 72: AOR 2.68(1.17-6.16)

死亡率
Day 14: 19 vs 34: AOR 0.36(0.17-0.76)
ICU退室時: 35 vs 43: AOR 0.69(0.35-1.33)
退院時: 43 vs 48: AOR 0.80(0.42-1.53)

植西

2012年7月22日日曜日

スタチンを使用していない患者で周術期にスタチンを使用するとMIとAFが減る

Chopra V, Wesorick DH, Sussman JB, et al. Effect of perioperative statins on death, myocardial infarction, atrial fibrillation, and length of stay: a systematic review and meta-analysis. Arch Surg. 2012;147:181-9. [PubMed ID: 22351917]

結論
Statinを使用していない患者で周術期にStatinを使用するとMIやAFが減少する

疑問
周術期のStatin使用はStatinを長期使用していない患者で臨床的アウトカムを改善させるか?




レビュー対象
手術をうける18歳以上で長期のStatin使用のない患者の研究
研究は以下のうち一つ以上のアウトカムを評価する必要あり: 周術期死亡, MI, AF, 入院期間, ICU入室期間
除外: PCIやCardioversion

レビュー方法
15RCTs(n=2292, 59-90%男性)
心臓手術(11RCTs, n=1056), 非心臓手術(2RCTs, n=1030), 血管手術(2RCTs, n=206)
14 studiesはplacebo control. 1つはHigh doseとlow dose atorvastatinを比較


Atorvastatin(8RCTs, n=852), Fluvastatin(3RCTs, n=1076), Pravastatin(1RCT, n=43)

結果
Controlと比較してどの手術をうけてもStatinはMIのリスクを減少し, 心臓手術ではAFを減少したが、死亡率は変わらなかった. 入院期間は減少したがICU入室期間は変わらなかった。





周術期死亡: 5 trials(n=1436). 2.3% vs 3.7%. NS
周術期MI: 10 trials(2077). 4.7% vs 8.9%. RRR 47%(26-62%). NNT 24(19-44)
周術期AF: 9 trials(n=933, 全て心臓手術). 20% vs 36%. RRR 44%(31-55), NNT7(6-9)
平均在院日数: 12 trials(n=2105). SMD -0.32(-0.53 to -0.11)
平均ICU期間: 9 trials(n=1503). SMD -0.08(-0.25 to 0.10). NS

コメント
非心臓手術の患者で使用されたデータはDECREASE III, IV trialのデータであるが, このtrialのsenior researcherは学問的な不正行為でくびになっている。調査委員会はTrialsのsource documentationとoutcome決定に関しての重大なprotocol違反をみつけた。よってこれらのデータの信憑性に疑いがある。

植西

2012年7月19日木曜日

CKDの患者では降圧薬は眠前投与がよい

Hermida RC, Ayala DE, Mojón A, Fernández JR. Bedtime dosing of antihypertensive medications reduces cardiovascular risk in CKD. J Am Soc Nephrol. 2011;22:2313-21. [PubMed ID: 22025630]

結論
CKDの患者で1つ以上の降圧薬を眠前に投与することは朝に投与するよりも心血管イベントを減少させた.

疑問
CKDの患者で1つ以上の降圧薬を眠前に投与することは朝に投与するよりも心血管イベントを減少させるか?

方法
スペインの三次施設.
RCT. Open-label. Allocation concealed. アウトカム評価者にblinded
フォロー 中央値 5.4年

患者
18歳以上(平均59歳. 60%男性)の661人の高血圧とCKD(3ヶ月以上あけて2回以上の計測でeGFR<60ml/min/1.73m2 a/o アルブミン排泄≧30mg/24hrs). 夜間勤務者やシフト勤務者は除く

Intervention
1つ以上の降圧薬を眠前(n=329)か起床時(n=329)に内服

Outcomes
Primary: 全心血管罹患と死亡
Secondary: 主要な心血管イベント(心血管死亡, MI, 脳卒中)

結果
全心血管罹患と死亡
眠前 vs 朝投与: Event rate 11% vs 31%. RRR 65%(95%CI 49-76%), NNT5(5-7)

主要な心血管イベント
眠前 vs 朝投与: Event rate 2.7% vs 7.8%. RRR 71%(38-87), NNT 18(15-34)

コメント
興味深いことに, clinicでのsBPと心血管イベント発生率の関連はよくいわれるJ curveを描いたが, 睡眠中のsBPではJ curveではなく, 低ければ低いほど心血管イベントが少なかった(図).
Limitationはsingle-centerであることと, open-labelであること, 降圧薬の調節にアルゴリズムが使用されなかったことである.


植西

2012年4月17日火曜日

偽膜性腸炎の治療

Drekonja DM, Butler M, MacDonald R, et al. Comparative effectiveness of Clostridium difficile treatments: a systematic review. Ann Intern Med. 2011;155:839-47. (PubMed ID: 22184691)

結論

Fidaxomicinは再発に関してはvancomycinより良い.
VancomycinとMetronidazoleは最初の治癒と再発には差がない.
他の抗菌薬を評価する十分なエビデンスはない.



疑問

Clostridium difficileの治療の効果と害は何か?

レビュー対象

米国で使用できるC. difficileに対する薬剤を評価した研究. アウトカムは最初の治癒, 再発, 死亡率, 下痢の期間


レビュー方法

英語のRCT. 専門家の意見も聞いている. 
11RCTs:n=1463, 平均年齢 42-69歳. 40-99%男性. 治療後のフォロー期間21-60日.
3RCTsはVancomycin vs Metronidazole (n=399)
5RCTsはVancomycin vs 他の薬(bacitracin, n=104; nitazoxanide, n=50; fidaxomicin, n=629; placebo, n=44).
1RCTはMetronidazole vs Nitazoxanide(n=142)
1RCTはMetronidazole vs Metronidazole+rifampin (n=39)
1RCTはVancomycinの量による違い(n=56)

6RCTsは割付法の隠蔽が適切. 6RCTsは患者も研究者も盲検. 3つはITT解析. 
不均一性のためdataはpoolしていない.

結果

Fidaxomicinはvancomycinより再発のリスクを減少させた(n=602)
Vancomycinは最初の治癒率をプラセボより上げた(n=21)
Metronidazoleにrifampinを追加することで死亡率は上昇した(n=39)
他は最初の治癒率, 再発率, 死亡率, 下痢の期間で差が無かった

結果の詳細

最初の治癒
Vancomycin vs placebo(1RCT, n=21),75% vs 11% p=0.008
差なし: VCM vs MNZ(3RCTs, n=333), VCM or MNZ vs 他の薬剤 or 他の量(7RCTs)
再発
Vancomycin vs Fidaxomicin(1RCTs, n=602), 25% vs 15%, p=0.005
差なし:VCM vs MNZ(3RCTs, n=283), VCM or MNZ vs 他の薬剤 or 他の量(7RCTs)
死亡率
MNZ vs MNZ+Rifampin(1RCT, n=39), 5% vs 32%, p=0.044
差なし: VCM vs MNZ(2RCTs, n=271), VCM or MNZ vs 他の薬剤 or 他の量(6RCTs)
下痢の期間
差なし: VCM vs MNZ(2RCTs, n=161), VCM or MNZ vs 他の薬剤 or 他の量(3RCTs)

コメント

それでもやはり重症例ではVCMが1st choiceだろう
上記メタアナリシスでは治癒率ではVCMとMNZに差は無かったが以下の研究がある.
Clin Infect Dis. 2007;45(3):302
1994-2002年の間のいろんな重症度のCDAD150人の患者をランダムにMNZ(250mg x4/d)かVCM(125mgx4/d)を10日間に割り付け.
全体での治癒率: MNZ 90%, VCM 98%で有意差なし.
重症CDADではMNZ 76% vs VCM 97%(p=0.02)
再発はMNZ 15%, VCM 14%であった.

因みにこの文献での重症例とは
以下のうちどれか2つある場合
1. 61歳以上, 2. 38.3℃以上, 3 Alb<2.5mg/dL, 4. WBC>15000